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マイルス・ハント The Longest Day festivalでのインタビュー 2001年9月

Claire Dyer interviews Miles Hunt at this years The Longest Day festival
the original text can be found athttp://www.rock-city.co.uk/content/AAAyApFVpJEZxTdVY.shtml

今回のライブはちょっと表立った動きですが、 このためだけにメンバーが集まったのですか、それとも今後バンドで活動しようと?

そうだねぇ、俺達には「絶対にありえないということはない」っていう決まりごとがあるにはあるんだけど、このメンバーでバンドとして活動を再開するなんてことになったら、俺としちゃすごい驚きだね。今週のこのライブ、それからクリスマス頃にも何かやって、そうしたら次は俺のアルバムが2月だから、俺にはワンダースタッフにかける時間が全然ないということなんだ。だけどメンバーの都合如何によってはまだ機会が出てくるのかもね。

再結成を決心させたものは何だったのですか?

バンドが事実上解散したとき、心の整理が皆ほとんどついてなかったんだと思う。あっという間の出来事だったもんで、おかげで俺達は1年ぐらい惨めな有様だった。今になってその頃を振り返ると「何をそんなに惨めったらしくしてるんだよ?堕落したヒドい連中だ」って思うね。意見が衝突して感情が高ぶってばかりだった。俺が「分かった、もう充分だ」と言うと、メンバーも「そりゃあ結構だ、俺達もそう思ってたところさ」ってわけ。それで終わった。残ったメンバーはすぐに他のバンドを始めた。俺はMTVに暫く出て、バンド作って、それからマルクとアメリカに渡ってアコースティックツアーをした。もちろんワンダースタッフの曲もいろいろやった。それからこっちでもやってみたらオファーが来初めて、プロモーターの何社かから「ワンダースタッフを再結成してみないか?」って言われたんだ。オファーがあるたびに俺はフィドリーに電話して、ギルクシーに電話して、「俺はやってもいいぜ。今でもアコースティックでワンダースタッフの曲やってるから、俺はそんなに大変じゃないけど」って言ったんだけど、そのうちの1人はいつだって「No」だった。俺とマルクはいつでもやる気で、もとからそういう予定があったってことじゃないよ、だけどオファーがあると俺達2人は「いいぜ」って感じだった。いつもNoだったのはギルクスだったんだけど、またオファーがあったんでメンバーに電話してみたら今度は全員がYesだったんだ。あれは2000年の夏のことだったね。やらない言い訳を思い付けるやつがいかなかった、それが昔からの典型的ワンダースタッフのスタイル。実際何をするかというより、何をやりたくないかというね。「やらない理由が思い当たらない、そんならやろうか」って。

以前インタビューしたとき、Hairyツアーの真っ最中でしたが、まっとうな仕事に就く気はさらさらない、自分の手が”ティーンエイジの女の子みたいな”手だから、と言っていましたが。

それはさ、はっきり言って俺が働いてもティーンエイジの女の子が働くのとの稼ぎが変わんないって言いたかったのさ。 クリスマスにライブをやったとき、モチベーションは今よりも高かったのかもしれない、「1年分の儲けになるんだぜ、もちろんやるよな」って。だけど今、そのクリスマスのライブがもたらしたものっていうのは、俺達をまた友達に戻してくれたってことなんだ。俺とギルクスは85年に知り合って以来付き合いでパブに行くなんてことがなかった、バンドにいたときでさえだよ、一度もね。それが、もう酒も飲まないギルクスだけど、パブにでも行かないかって誘いの電話をくれる、これは変わったことだよ、なんたって今までなかったことなんだから。そういうことを思うと、本当にいいよね。今回のオファーの分と来週もロンドンでいくつかやるけど、(2000年の)12月にやったときよりもっと楽しさが味わえるって感じさ。しかも仕事として他にやりたいことがあっても両立できるんだし。もし昔のようにワンダースタッフが生活の全てなんてことになったら有り様がすごく変わってしまうと思う、俺が惨めだと思うのはそういう状況さ。

長くバンド外での活動でしたが、バンドに戻るのは簡単でしたか?

バカみたいに簡単だったよ。唯一の難点といえば、ベースにポールを使いたくなかったことかな、俺がどうしても違うベーシストにしたいって言い張ったもんで。俺はスチューイを何年も前から知っていたんだ。新しいベーシストでっていうことだけだね、問題は。スチューイは一度も弾いたことなかったんだから、なにせハードコアバンドにいたんだ。時間は少ししか取れなかったけど、覚えるのが本当に早くてね。俺がアメリカにいる間、先にメンバーでリハーサルをしてもらった、俺は先週帰ってきたばかりなんだ。スチュアートの強い希望があってリハーサルをしたこともあったよ。「12月のと同じ曲じゃおもしろくないよ、僕が覚えられる曲はもっとない?」って。それでメンバーはリハーサルを続けて。その中には7-8年前にレコーディングしたっきりって曲もあったね。ショックだったよ、自分が歌詞の最初の一行すら分かってなかったのには。でもマイクに近づいていくと自然と口から言葉があふれてきた、それで曲の全部を歌えたのさ。 いつでも覚えている情報も、忘れてしまっていた情報も、全てちゃんと思い出すことができる。だからばかみたいに簡単だったってわけ、実際はね。・・・まぁ、そんなこと気にしないで見てくれればいいよ!

ネッズの再結成をどう思いますか?

正直言って、ネッズがいいと思ったことは一度もなかったんだ、くだらないっていつも思ってたから。 本当にどうでもよかった。ネッズのことは理解できないんだけど、絶対ないと言いつつ、去年Dudleyでライブをやったよね。その時「もういい」ってのをまた繰り返した上に、このLongest Dayだろ。だから俺としては、「もうカンベン」って感じ。

再結成してほしいと思うバンドがあれば、それは何ですか?

ちょうど実現しちゃったんだよ、ジェーンズ・アディクション。ニューヨークで2ヶ月前に観たんだ、信じられない!俺は赤ちゃんみたいにライブ中ずっと泣いてたよ。前列のチケットを持ってなかったから、観客が前になだれ込もうと殺到したとき、25000人近くの観客が浜辺の野外会場にいたんだけど、俺はセキュリティの間を走り抜けて行ったね、子供の頃だってそんなことしなかったのに。頭を低くして目一杯走って前から4列目に傾れ込んでさ、むせび泣いていっしょに歌ったよ。 あとは、ウォーターボーイズのマイク・スコットがPagan PlaceとかThis Is The Seaみたいな頃のサウンドでやるなら観たいけど、それ以降のはどれも気に入らないな。 クラッシュは皆観れたらなって思ってるんじゃないのかなぁ、きっと俺達は世代が若すぎるから。マルクは観たと思うけど、今は観たいとは思わないね。

ジョー・ストラマーに会ったことはありますか?

ないよ、TVでグラストンバリーのを観たけど。あれは去年のだったのかな?正直言ってあまり楽しめなかったな。でも、ニューアルバムを聞いたら、すごくいいと思ったよ。

80年代後半/90年代前半のシーンを通して、ワンダースタッフはどういう位置にいたと思いますか。

さぁ。Give Me Moreがリリースされたとき、その頃はRadio 1はまだモノラルの中波放送で、マネージャーから電話がかかってきて「10時半のSimon Batesを聞けよ、シングルがかかるぜ」って言われたのを覚えてる。小さいラジオをつけたらラジオからBrrrrrggghhhみたいなのが聞こえてきたなぁ。あの頃リック・アストリーとか メル&キム とかそんなのばっかりでさ、そしたらギターが聞こえてきて。こりゃヒドいと思ったね、イヤになった。その時Radio 1は俺達のためにはならないって思ったけど、結局正しかったんだな。 俺達は今までとは違う新しい存在でいたかった、ちょっと思い上がってるみたいに聞こえるかもしれないけど、それこそ俺がバンドにそうあってほしいと思っていたものだった。でも俺達はそうじゃなく、ポップバンドだった。そのこと自体は誇りを持っていることなんだよ、だけどメインストリームじゃない、異なった存在に見られたかったんだ。

そのように見えていたと思いますよ。

だろう、レコードのセールスがそれを物語ってる。 オアシスが人気が出たけど、きっと俺達と同じドアを叩いたんだ、ギターとポップソングだろ、でもオアシスにはスタイリストがいてデートモデルがいて、ロックンロールのあらゆる面を演じた。それに引き換え俺達ときちゃ、ムサ苦しいボロキレみたいなバカ連中。 ロッド・スチュワートみたいな生き方に愕然とするね、でもそれはこういうバンドが全部やってそうなことなんだけど。

ミュージシャン人生で、よかったと思う点や、これは大きかったというような出来事はありますか?好きな曲やアルバムは?

ないよ、本当に。ある1日が違う1日へと移り変わって行くみたいなもので。どの日も大事だよ。 多分12月のライブはワンダースタッフとして過ごした中でも最高の時間だった、俺はどんな時でも惨めでちっぽけな存在だったからね、自分のために惨めにしてきたんだ、なぜか分からないけど。 Ventのことは、今でもやっていればなぁって正直思った。今までやってきたことの中でも、Ventはとても気に入ってた。ドラマーは、ここにいるピートで、来年俺のアルバムでいっしょにツアーをする予定さ。そのアルバムは自分の一番の自信作でしかも最高にバカバカしい。ボブがいたころの初期のワンダースタッフにはバカバカしさしかなかったのに、遠い昔だけど考えてもごらんよ、19歳の頃みんな楽しくやってた。なのに30になってVentなんてカッコイイだろ!

ワンダースタッフが解散した時、解散しなければと思いましたか?

全然。俺達は、自分達そしてバンドを気に入って尊敬してくれていた皆をも本当にダメにしてしまったと思う。俺達とオーディエンスはお互いに尊重し合ってたし、悪口も言い合った。だけどお互い理解し合ってたし、少なくとも俺は、そんな悪口も笑えることだと観客が理解してくれてると思ってた。 あの時点でバンドをやめないで、何もかもレーベルの言いなりになって、1年間休養し、その間何もせず、戻ってきたとしたら、前代未聞の大事件だね。「離れてリラックスしたら」みたいに聞こえるかもしれないけど、リラックスなんてできやしないよ、「ヒットするような曲を作らなきゃ」ってその間もずっと考えてないといけないんだから。俺にはそんなことムリだし。俺達の辞め方はすごいよ、だって商業的にゲームのトップにいて、 結果的に大の大人達がフェニックス・フェスティバルで泣くような状況なんだから。俺はただ辞めたかっただけなのに、不思議。ライブをやるのもイヤになったし、ともかくそれで終わりにしたかったんだ。 でも、俺もオトナになって、12月にライブをやってみて、バンドが人々にとってどれほどの意味があったのかが初めて理解できたんだ。 ネッズの場合を例に考えてみると、ネッズが解散しなければならなかったのは、ネッズが世間から離れつつあったということなんだ。チケットも完売しなかったし、もうレコードを出す気でもなかった、だから世間から消えねばならなかったんだと。だからネッズの復活には俺の心はこれっぽっちも動かない。 クリスマスにワンダースタッフでライブをやってみて、その観客の反応を見て分かったのは、「すごい、こんなにたくさんの人達にとって意味のあることだったなんて」ってことなんだ。 12月のライブにたくさんの人達が来てくれたという根拠だけでも、俺達は完璧にやったんだなって、正直思う。 もしあの当時バンドを続け、スタイリストを探すなんて恥ずかしいことしていたら、ミュージクシーンは変わってただろうし、こういうギターバンドがイギリスで一番の人気バンドになったかもしれない。 つまり、オアシスみたいなバンドがウェンブリーでやるってのには唖然とすると言いたいのさ。まぁいいさ、彼らがそれを実現できてうれしいけど、俺にとっちゃそれほど真剣に受け止めるようなことじゃない。俺達はゲームを変え続けただろうしね。ワンダースタッフのアイデンティティっていうのは”挑発的で自嘲的”なんだと思う。もし俺達がレーベルの言いなりになって、気取って、U2みたいな態度で人の前に姿を現したとしたら、サイアクなことになってたと思う。

あなたのソロ活動について。Flapping On The Pierはニューアルバムですか?

それは仮のタイトルで、Flapping On The Pierという曲がアルバムにはいってるのさ。

Hairy On The Insideのようなアコースティックですか?

違うよ、バンドメンバーが揃ってるんだ。弦楽器のパートを全部はずしてさ、アメリカでレコーディングしたからFiddlyを呼べる余裕がなかったってだけなんだけど。マイケル・フランティーノってやつに出会ってね、こいつがニュージャージー出身のすごいシンガーソングライターで、レコーディングは基本的にマイケルのバンドのドラマーでベースでプロデューサーでもある男とだった。アルバムはEverything Is Not Okayというタイトルになる予定、バンド形態でレコーディングし直したから。で、名前はMiles Hunt clubでアルバムジャケットはわざと50年代風の古臭い感じにしてからかってる。まあふざけたユーモアのセンスを取り入れたってわけ。

もし他のワンダースタッフのメンバーと新しく始めるとしたら、どんなサウンドになると思いますか。

きっと昔と変わらないだろうね。ギルクシーはバンドをいくつもマネージメントしてるけど、 ギターポップ系のバンドばかりだし。マルクは全然変わっちゃいない、未だにThe Long Ridersが好きだしね。いつもアメリカのギターミュージックに傾倒しててさ。俺はジェーンズ・アディクションを聞くまでそういう音楽に興味はなかったんだけど。 リハーサルで、どこにも使えやしないだろうと分かってる新しいアイデアで弾いてみると、やっぱりワンダースタッフっぽいサウンドになっちゃうからおかしかったね。 本当に笑えるんだけどさ、自分一人で作ったデモを弾くだろ、その段階ではまだ自分の曲って感じなんだけど、ギルクスに叩かせてマルクにギターを弾かせると、どう、サウンドがそうなってしまうんだ。すぐに「これはこの曲で使おうと思ってたアイデアじゃなかった、他のバンドで使うよ」って感じ。 だから、そう、どうしても同じ感じになると思うよ。そうならないようにと思えばできるのかもしれないけどね、だけど実際はそうしないと思う・・・。そう言えばこういうこともあった、ある日ビデオ撮影のリハーサル中に休憩してたら、その夜俺達は衣装でタキシードを着る予定だったんだけど、マルクが「スーツなんかヤだね、そんなもん着るもんか」の一点張り。だから皆で派手なのを置いてる貸衣装屋に行って、バカみたいな熊の着ぐるみと、体の前がエミューの胴体になってて自分の足がその足になって出るようなのを借りたんだ。そういうの着て弾いたらおもしろいと思って。衣装を着なくてもいいはずだったのに、結局そんな衣装着けてさ。俺達バカ同然!!

LAST_MODIFIED : 07/11/07 JST